『身体が弱いから鍛えないと、大人になった時にこれくらい出来ないと』と
郊外の山に住んでいたじーちゃんは、幼少の頃は週末毎に家に迎えに来た。
小学生低学年中、冬休みは当然合宿。
じーちゃんの若かりし時代、勤務先で山の中の郵便局では移動手段のひとつだった。
アザラシ皮のゾンメルスキーで華麗にテレマークを決めるじーちゃんは旭山の赤い彗星(笑)
スキー場での練習はもちろん滑り方など子供用ではない。
カンダハで泣きながらついてゆく私にそのうち愛想を尽かし
自主練を課してさっさと一人リフトに乗って行ってしまう。
ゲレンデスキーとは孤独なのだ。子供心に思った。
山林トレーニング、気を抜くと立ち木にぶつかる。下手だからぶつかる。
有刺鉄線の牧場トレーニング、気を抜くと有刺鉄線に激突する。
田圃の中の歩行自主練、気を抜くと深雪の下の田んぼの泥水に埋まる。
スキーとは孤独だ。
吹雪の田んぼのまんなかで大の字に埋もれ(この方が温かい時もある)
空を見上げ囁く雪を騒ぐ風を仰ぎ見る…のは楽しかった。
孤独のはずなのにその何者かを…どう思っていたのだろう。
当時小学低学年ってカンダハ(今の山スキーとかのに似てる)だったから、
冬休みが終わるころはもう板がボロボロだった。
そうだ、同級生は山林や有刺鉄線のある所や田んぼで練習しない。
と、ずいぶん後から気が付いた。
説明したところでカテゴライズ出来ないスキー。
その頃がきっと今までで一番スキーをしていた気がする。
あ、かんじきと言う名のスノーシューもね。
こういうのはその頃面白いとか面白くないとか考えたことないんだけれど、
雪だけのせいじゃない真っ白な時間は好きだった。
で、じーちゃんの言った大人になってずいぶん経った今
どうだったかと聞かれると…
今もこんな風に遊んでいます、おかげさまでこうしてネタに出来ました。
と笑うが吉